絶対に不可能と言われた
日本唯一の有機パイナップルへの挑戦
山中 広久
農産部
有機パイナップルについて教えてください
「農薬や化学肥料を使わずにパイナップルを育てたい」という思いから、このチャレンジは始まりました。
私自身が農薬に対してアレルギーが出てしまった経験もあり、お客さまが安心・安全を求めてなるべく身体に優しいものを探している気持ちが強く分かります。
パインを知る人々からは「無農薬で販売用のパイナップルをつくるのは絶対に不可能だよ」と言われましたが、私たちはチャレンジすることを決め、日本唯一の有機JAS認定を取得しているパイナップルが生まれました。
やえやまファームでは、3つの有機パイナップルを作っています。最も一般的なハワイ種、桃を思わせる香りがあるピーチ種、スナックパインと呼ばれる手でちぎって食べられるボゴール種を育てて販売しています。
収穫は毎年6~7月をピークにして出荷を行っており、数量が限られているため、お客さまは毎年3月から予約ができるように、オンラインでの販売もしています。
※2022年3月現在、日本で唯一の有機JAS認定パイナップル農場(自社調べ)
有機パイナップルを作る苦労について教えてください
土を耕すのに数年、そこから株を仕込んでから収穫まで2年の歳月がかかります。この間、農薬を使わないことで、さまざまな苦労の連続です。
苗が土に定着したのがわかると、化学肥料ではなく鶏糞を散布して株を成長させます。追加の肥料としては、泡盛メーカーさんからいただいているもろみ(泡盛の残渣)を散布します。もろみが発酵することでタンパク質がアミノ酸に分解されて、素晴らしい土壌になります。
また、沖縄は雑草の生えるスピードがものすごく速いです。農薬を散布できないので、防草シートを張り、そのわきから生えてきた雑草は一つ一つ手作業で取り除きます。畑の最後の除草が終わるころには、最初に除草した場所からは新たな雑草が生えてきているので、終わらない戦いですね。
大変なのは雑草だけではありません。害を及ぼす生物もたくさんおり、イノシシ、ネズミ、こうもり(フルーツバット)、カラス、キジ、クジャクなどが、農薬の使われていない美味しいパイナップルを食べに来てしまいます。島に天敵のいないイノシシは石垣島の生態系の頂点に君臨しており、過去にはイノシシの被害で有機パイナップルの苗が全滅してしまう被害もありました。あの時のことは今でも鮮明に思い出すことができますが、すぐには立ち直ることはできませんでした。その後もいろいろと工夫しましたが、農薬を使った害虫・害獣対策ができないので、イノシシの嫌がる音が出る害獣対策機器を設置するなど、さまざまな工夫を行っています。
農薬を使えば成長も早く、病気にもなりにくいのですが、私たちは、一つ一つ工夫しながらチャレンジしています。
そんなたくさんの苦労を乗り越えて、2年後に収穫を迎えるときは、お客さまに安心安全なパイナップルが届けられるうれしさで、本当にいっぱいです。
社内ではパイナップル王子と呼ばれているらしいですね
そうなんです(笑)。パイナップルが本当に大好きで、ただ育てるだけではなく、本当にいろいろな条件で工夫しながら挑戦と失敗を繰り返しています。その過程でパイナップルについてはかなりの知識やノウハウが身についてきました。私からすると好きでやっているだけなのですが、社内のみんなからは、突き詰めたて突き詰めて、突き抜けてしまってパイナップル好きな私のことを「パイン王子」と呼ぶ人が多いですね。
2021年から、オンラインツアーで有機パイナップルの畑についてのレクチャーなども行っています。そういうときは「パイナップル王子」というキャラがあると、割り切って皆さんにパイナップルのことを伝えやすくもあるので、今はそう呼ばれても違和感はないですし、もっともっとパイナップルについて詳しくなっていきたいですね。
やえやまファームは、社員にスパイス専門家がいたり、シェフがいたりと、本当にいろいろなことを突き詰めている人たちがいるので面白いですよ。ぜひ、私たちと一緒に働きたい方や、農産で一緒にパイナップルを作ってくださる方がいれば、お話をしていきたいです。
山中さんの今後のチャレンジについて教えてください
私自身は、有機パイナップル収穫量を増やし、より多くの人に有機パイナップルを食べていただけるようにしていくのが目標です。また、農産チームとしては新たな果物や野菜などのチャレンジも仕込んでいます。
また、やえやまファームは循環型の6次産業に取り組む会社でもあり、石垣島の豊かな自然を守るために「地球に優しい農業」にチャレンジしていきたいですね。
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